この記事でわかること
- ネット記事や動画、本などに載っている練習メニューをそのままコピーしてもうまくいかない理由
- 練習メニューを自分のチームの状況に合わせてアレンジする方法
私のようなサッカー未経験からスタートした指導者は、練習メニューを考えることに楽しさを感じつつ、それ以上に頭を悩ませることが多いと思います。
しかし、10年以上サッカー指導に携わってきた中で、陥りやすい落とし穴やその対処方法について整理することができました。
この記事では、練習メニュー作成の際に陥りやすい落とし穴やその対処方法をお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
練習メニューをただコピーしてもダメな6つの理由
「有名な指導者やチームが取り入れている練習なのになぜコピーしてはいけないのか?」
そう思っても不思議ではありません。
ぜひここで「練習メニューをただコピーしてもダメな6つの理由」を知ってその疑問を解決し、練習メニューの作成に役立ててください。
練習メニューをただコピーしてもダメな6つの理由
・練習に流れがない
・練習内容が事前に計画されたテーマ・キーファクターに沿っていない
・練習内容がプレーする選手のレベルに合っていない
・練習をおこなうスペースの広さが合っていない
・練習時間の長さが適切でない
・指導者のコーチングの質が低い
「今日はどんな練習をしようかな・・・」
サッカー未経験者や初心者に限らず、そう頭を悩ませた指導者・コーチは多いと思います。
そんな時、ネットや本などで練習メニューを探すことはとても簡単ですし指導に役立つものです。
しかし、ただ練習メニューをコピーしただけでは、
「想像していたような練習にならない」
「期待していたような効果が出ない」
となるのは明白です。
その理由は上記の通りですが、より詳しくその1つ1つについて見ていきましょう。
1.練習に流れがない
1日のトレーニングメニューには、以下のような流れが必要です。
step
1ウォーミングアップ
step
2トレーニング1
step
3トレーニング2
step
4ゲーム
step
5クーリングダウン
それを無視して、ウォーミングアップ用の練習メニューのみやゲーム形式の練習メニューのみで1日のトレーニングメニューを構成してしまうといった偏りがあれば、良い効果は望めません。
また、以下のような流れになってもいけません。
(極端な例を示しています)
step
1トレーニング2
step
2ウォーミングアップ
step
3ゲーム
step
4クーリングダウン
step
5トレーニング1
これらを基にして、自分が参考にするトレーニングメニューがどの段階に該当するものなのかをチェックするようにしましょう。
上記のような正しくない流れにしてしまうと、それぞれの練習メニューが完璧なものであったとしても選手の理解は進みません。
2.練習内容が事前に計画されたテーマ・キーファクターに沿っていない
自分たちのチームが取り組んでいる練習のテーマやキーファクターを考慮せず、
「有名な指導者やチームがやっている練習だから」
などという理由で取り入れてしまうと、選手たちにとっては意識するポイントが定めにくくなってしまいます。
また、
「ポゼッションを改善するための練習だと思っていたが、やってみたらサイドを崩すための練習になってしまった」
などとなってしまうこともよくある話です。
やっかいなことに、ネットや本などで紹介されている練習メニューの中には練習テーマやキーファクターが明示されていないものも少なくありません。
良い練習メニューであるかどうかだけを基準にするのでなく、自分たちが取り組んでいる課題の改善につながるトレーニングであるかどうかを常に意識しましょう。
3.練習内容がプレーする選手のレベルに合っていない
ひとくちに「選手のレベル」と言っても色々な要素があります。
まず真っ先に思い浮かぶのはボールコントロールをはじめとした技術的な部分だと思いますが、この点が指導を受ける選手にとって簡単すぎたり難しすぎたりすると、肉体的・精神的に適切な負荷をかけることができません。
また、話を聞く力なども選手のレベルに含まれます。
まだ話を集中して聞けなかったり理解力が乏しかったりする年齢の子どもに複雑なルールの練習をさせたり、反対に理解力が十分についている選手に単純な練習を繰り返しやらせるなどといったことも、練習の効果が出ない原因の1つとなります。
4.練習をおこなうスペースの広さが合っていない
練習テーマやキーファクターと同様に、ネットや本にはどれくらいの広さでおこなう練習であるのかが記載されていないことも多いです。
また、広さが書いてある場合でも、その通りにしてうまくいく場合もあれば、選手のレベルに合わせて狭くまたは広くした方が良い場合もあるでしょう。
適切な広さと比べて狭すぎるまたは広すぎるスペースでおこなわれれば、必要になるプレーが変わり、それに伴って練習のテーマやキーファクターも変わってしまいますので、注意しましょう。
※指導に慣れないうちはどれくらいが適切な広さなのかわからないと思いますので、「縦10m・横6m」という1人あたりのスペースの基準を覚えておくと便利です。
4人対4人の例:縦:10×4=40m、横:6×4=24m
5.練習時間の長さが適切でない
選手のレベルや年齢が違えば身体的にも精神的にも持久力は大きく変わってきますので、ネットや本の記載通りの時間でやろうとしてもうまくいかないケースが出てきて当然です。
高度な測定機器を使用すれば心拍数や血糖値の変化などから適切な身体的負荷を調べることができると思いますが、ここでは初心者コーチが指導するような状況を想定しなければなりません。
そのため、以下のような基準や考え方を持っておきましょう。
・ストップとダッシュが頻繁に起こる練習メニューの場合:練習時間は短めにする
・ジョギングに近いスピードでのプレーが大半の練習メニューの場合:練習時間は長めにする
練習時間を事前に想定しておくことは必要ですが、練習テーマとの合致具合・選手の疲労度・集中力の低下具合などをみて柔軟に対応することの方がより重要です。
6.指導者のコーチングの質が低い
「コピーしてはいけない理由」ではないのですが、練習がうまくいかない大きな理由の1つなのでここに入れました。
参考にした練習メニューがたとえすべてそのままコピーしてよい内容であったとしても、指導者のコーチングの質が低いとうまくいきません。
コーチングの質が低いと、選手の意識を練習のポイントに向けさせることができなかったり、必要なプレー機会を与えることができなかったりするからです。
コーチング能力はすぐに向上するものではないですが、以下の「3種類のコーチング方法」を適切に使い分けることを意識しながら、試行錯誤を繰り返して徐々に改善していきましょう。
3種類のコーチング方法
・ゲームフリーズ(フリーズコーチング):全体のプレーを止めておこなうコーチング
・シンクロコーチング:全体のプレーを止めずにおこなうコーチング
・ミーティング:ホワイドボードなどを使用しておこなうコーチング
練習メニューをチーム状況に合わせるための6つのアレンジ項目
ここまで、「どんなに優れた練習メニューでもそのままコピーしては意味がない」ということを理由を含めて説明してきました。
本業のかたわらでコーチを務められているような方は練習メニューをじっくり考える時間がないと思いますので、「コピーじゃダメなのか・・・」とガッカリされたかもしれません。
でも安心してください。
「そのままコピーする」のが良くないのであって、「参考」にして「アレンジ」することはまったく問題ありません。
それどころか、まだ自分で練習メニューをうまく作れない段階においては、短い時間で質の高い練習メニューを考えるための大きな助けになります。
ここからご紹介する「練習メニューをチーム状況に合わせるための6つのアレンジ項目」を活用して、ぜひアレンジしてください。
練習メニューをチーム状況に合わせるための6つのアレンジ項目
- 練習をおこなうスペースの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
- フリーマンの有無:あり→易しい・なし→難しい
- 参加人数:少ない→易しい・多い→難しい
- ボールタッチ数の制限の有無:なし→易しい・あり→難しい
- 設置するゴールの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
- ゴールキーパーの有無:なし→易しい・あり→難しい
※各アレンジ方法の「易しい・難しい」は攻撃側(=ボール保持側)から見た難易度です。
「チーム状況に合わせる」とは、言い換えれば「練習のテーマやキーファクターを変更することなく難易度を調整すること」です。
スポーツ心理学では目標を設定する際の目安として「全力を出した時の成功確率が50%」ということが挙げられることが多いので、そこに近づくよう調整します。
ただし、サッカーを始めたばかりの子どもたちの練習であったり、選手により自信をつけさせて前向きな気持ちにさせたいという考えであったりするならば、成功確率が60~70%程度となるようにしてあげるのも良いアレンジです。
※1項目だけアレンジすればよい場合もあれば、複数項目をアレンジした方が良い場合もあります。
1.練習をおこなうスペースの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
スペースが広くなると攻撃側にプレッシャーがかかりづらくなります。
比較的調整がしやすい方法ですが、より広くしたいと思った場合は利用しているグラウンドに十分な広さがないとアレンジできない場合があります。
2.フリーマンの有無:あり→易しい・なし→難しい
「フリーマン」とは、「常にボール保持側の味方になる選手」の事です。
フリーマンがいると攻撃側が数的優位になるため、攻撃はより簡単に、守備はより難しくなります。
また、練習メニューによっては複数のフリーマンを入れた方が良い場合もあります。
3.参加人数:少ない→易しい・多い→難しい
まずは2チームとも同数の状況で考えてみます。
極端な例を出すと、通常11人対11人でおこなわれるサッカーの試合を100人対100人に増やしたら、ゴールを奪うのがものすごく難しくなります。
反対に5人対5人などに減らすと、点の取り合いになるでしょう。
続いて2チームの人数に差がある場合で考えてみます。
プロの試合で退場者が出ることは珍しくありませんが、11人対10人の状況であればそれほど点が入らないことも多いです。
これが仮に100人対99人となれば、どちらかが数的優位・数的不利とは感じられないでしょう。
しかし、2人対1人などとなれば、明らかにワンサイドゲームとなるはずです。
このように参加人数を変えることによって難易度の調整ができますが、気を付けなければならないこともあります。
それは、参加人数を変えることで練習のテーマやキーファクターが変わってしまわないかということです。
例えば、2対2の状況にしてしまえば3人目の動きは起こり得ません。
練習のテーマやキーファクターは元の狙いのままになるよう気を付けてください。
4.ボールタッチ数の制限の有無:なし→易しい・あり→難しい
「シュートは必ず2タッチで」「パスは2タッチ以内で」などというように、プレーする際のボールタッチ数の制限をつけることで、攻撃は格段に難しくなります。
ただし、実際のサッカーの試合をイメージするとわかる通り、ワンタッチでプレーした方がよいのか・ドリブル突破を仕掛けた方が良いのかなどは状況によって変わります。
制限をつけることで「サッカーの練習」でなくなってしまうことのないよう気をつけましょう。
5.設置するゴールの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
正式なゴールでなくコーンなどでゴールを設置することも多いと思います。
そのような時、コーン同士の幅を広げたり高さのあるコーンを使用したりしてゴールを広げれば、攻撃はより簡単に、守備はより難しくなります。
同様にゴールの数を増やしても攻撃優位になりますが、そうすることで必要となるプレーが変わってしまうことがあります。
結果として練習テーマが変わってしまうことがありますので、ゴール数を増やす場合はそうならないよう注意を払いましょう。
6.ゴールキーパーの有無:なし→易しい・あり→難しい
ゴールキーパーをつけない練習メニューの方が点が入りやすくなるのは当然です。
このような状況を作り出すことで、攻撃側はより積極的にシュートを打つようになり、守備側にはより適切な対応が必要になります。
ただし、そうした利点がある一方、必要となるプレーや練習テーマが変わってしまうこともあるので、このアレンジ方法を採用する場合は注意してください。
まとめ
この記事のまとめ
・ネット記事や動画、本などに載っている練習メニューをそのままコピーしてもうまくいかない理由は次の6つ。
-
練習に流れがない
-
練習内容が事前に計画されたテーマ・キーファクターに沿っていない
-
練習内容がプレーする選手のレベルに合っていない
-
練習をおこなうスペースの広さが合っていない
-
練習時間の長さが適切でない
-
指導者のコーチングの質が低い
・コピーではなく、練習メニューを自分のチームの状況に合わせてアレンジするのは有効。その方法は次の6つ。
- 練習をおこなうスペースの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
- フリーマンの有無:あり→易しい・なし→難しい
- 参加人数:少ない→易しい・多い→難しい
- ボールタッチ数の制限の有無:なし→易しい・あり→難しい
- 設置するゴールの広さ:広い→易しい・狭い→難しい
- ゴールキーパーの有無:なし→易しい・あり→難しい
※各アレンジ方法の「易しい・難しい」は攻撃側(=ボール保持側)から見た難易度
最後までお読みいただきありがとうございます。
チームの方針・選手の年齢・グラウンドの広さ・指導者のレベルなど、チームの状況は千差万別です。
そうした中で、仕事の合間に指導を請け負っている未経験コーチが完璧な練習メニューを作成するのは大変なことです。
手っ取り早くネットや本などから練習メニューを見つけてコピーしてしまいたくなるのも当然です。
しかし、今回ご紹介した内容を参考にして、まずは1か所からでいいので自分のチームに合わせてアレンジしてみてください。
必ずや選手たちの表情やプレーが改善し、指導者としてのやりがいや喜びを感じられるようになるはずです。
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