この記事でわかること
- スムーズにポゼッションやビルドアップをおこなうためにはどのようなポジションをとればよいのだろうか?
- ポジショニングを改善させるためには普段の練習からどのようなことを意識させればよいのだろうか?
この記事では上記の疑問を解決していきます。
「簡単に相手ボールにすることなく、もっとマイボールの時間を増やしたい」
そう思っている指導者の方も多いことでしょう。
しかしいざ改善に取り組むと、意味もなくボールに寄ってきてしまったり、とりあえずボールを受けてから「さあどうしよう?」となってしまったりすることを改善する難しさに頭を悩ませることになります。
うまくいかないイライラからか、
「もっとサイドに開け!」
「広がれ!」
と選手たちの判断を奪うような声がけをしている光景も試合・練習を問わず多く目にします。
あらためて「良いポジショニングとは何なのか」と問われると答えに窮してしまいそうですし、5レーンなど高度な理論は子どもたちに理解させるのは難しく、また1つの知識だけ備えても状況に適したプレーができるようになるとは思えません。
そこでこの記事では、中学生でも(人によっては小学生でも)理解でき、様々な状況で応用可能な「良いポジショニング」の考え方と、そうしたポジションをとれるようになるための「3つの改善ポイント」をご紹介します。
私もポゼッション・ビルドアップをうまく改善できない時期がありましたが、この考え方を導入したところ、30分間のミーティング+60分間のトレーニングの合計90分間で劇的に改善することができました。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
ポゼッション・ビルドアップにおける「良いポジショニング」とは何か?
いきなりですが質問です。
この2つのシーンを見比べて、赤チームのポジショニングが比較的良いと思うのはA・Bどちらでしょうか?
(どちらも赤チームがGKから攻撃を開始しようとしているシーンです)
A | |
B |
回答は出ましたでしょうか。
それではもう1つ質問です。
その理由を尋ねられたらどのように回答しますでしょうか?
様々な理由が考えられますが、
「選手同士の距離感が悪いから」
「バランスが悪いから」
といった答え方が一般的でしょうか。
確かに、「選手同士の距離感が悪い・バランスが悪い」となると、「ボールを失う可能性が高くなる」「前にボールを運べなくなる」といったことが予想されます。
そこでこの記事では、
・ボールを失う可能性が低い
・チャンスがあれば前にボールを運ぶことができる
という条件を満たすことを「ポゼッション・ビルドアップにおける良いポジショニング」と定義づけて話を進めていきます。
ここからはポジショニングの改善につながる3つのポイントをご紹介していきますが、すべてを見終わった後には先ほどなぜ「選手同士の距離感が悪い」「バランスが悪い」と感じたのかが明確になるはずです。
改善ポイント①:常に「入口」と「出口」を見つける
ポジショニングというと選手のいる場所や配置に意識が強く向きがちですが、それに加えて体の向きも良いポジショニングには欠かせません。
良いポジショニングをとれている選手とそうでない選手の大きな違いの1つは、「入口」と「出口」を見つけられているかどうかです。
ここで言う「入口」とは自分にパスが通るためのコースのことであり、「出口」とは自分が他の選手にパスを通すコースのことです。
常に「入口」と「出口」を見つける |
ここでは6番の選手が2番からパスを受けたあと7番に出しています。
6番の選手にとっては2番のパスが自分に通ったコースが「入口」、7番のコースにパスを通したコースが「出口」となります。
また、2番の選手にとっては6番にパスを通したコースが「出口」、7番の選手にとっては6番からのパスが通ったコースが「入口」となります。
入口が見つけられない選手はそもそもパスを受けられませんし、ボールを持った味方を孤立させることにもなります。
また、出口を見つけられない選手はボールを受けた後のプランがないため、不正確な判断によりボールを失う危険性が高くなります。
この2つは常に見つけておきたいですし、よりポゼッション・ビルドアップのレベルを上げたいのであれば複数のコースを見つけておきたいところです。
改善ポイント②:パスで「ライン」を突破できるようにポジショニングする
ポゼッションやビルドアップで効果的に攻撃をするためには、当然ながらどのようなパスを使っていくのかが重要になります。
一か八かのロングボールしか使えないようであれば攻撃に再現性は望めませんし、だからといってボールを失うことを恐れるあまり何の狙いもなく近くの人にボールを預けてばかりいては相手ゴールに近づけません。
それらを避け、ボール保持を意識しつつ相手に脅威を与えるために、パスで「ライン」を突破できるようにポジショニングしましょう。
ここでいう「ライン」は以下のところにできる3種類のラインのことです。
①相手と相手の間
②相手とタッチラインの間
③相手とゴールラインの間
このラインを意識してポジショニングすることで、1本1本のパスに意味を持たせることができます。
それぞれ例を出して見てみましょう。
①相手と相手の間 |
②相手とタッチラインの間 |
③相手とゴールラインの間 |
改善すべき例も見ておきましょう。
ここでは、パスでラインが突破できていないシーンを例に出します。
改善すべき例:パスでラインが突破できていない |
このようなポジションをとると、パスが通ったとしても状況は変わらず、相手のバランスも崩れません。
ちなみに、フィールドプレーヤーがGKに近づいてボールを受け取るプレーについては、状況によっては例外的にOKとします。
GKにも可能な限り上記の条件を満たしたパスを求めたいですが、GKがゴールを空けるリスクが割に合わないことがあるためです。
また、1本のパスで突破するラインが1本でなく2本・3本と多くなれば展開が速く・大きくなります。
その分難易度は上がりますのでいつもそればかり狙ってもいられませんが、状況によって使い分けられるようになるとさらにレベルの高い攻撃が可能になるでしょう。
1本のパスで複数のラインを突破する |
改善ポイント③:同じ「入口」「出口」「エリア」に複数の選手が入らないようにする
これまでに挙げた2つの改善ポイントを理解してポジショニングできる選手が増えてくると、少しずつポゼッション・ビルドアップが改善してくることでしょう。
しかし、この2つだけではカバーしきれないポイントがまだあります。
そのポイントとは、「同じ入口・出口・エリアに複数の選手が入らないようにする」というものです。
入口・出口が何かということについては前述のとおりですが、ここでいう「エリア」とは、相手選手3名ないし4名を結ぶことでできる三角形や四角形のことを指します。
改善すべき例①:同じ入口に複数の選手が入ってしまっている |
改善すべき例②:同じ出口に複数の選手が入ってしまっている |
改善すべき例③:同じエリアに複数の選手が入ってしまっている |
注意・補足
フィニッシュ(相手ゴール前)での応用
今回はポゼッションやビルドアップを改善するためにどのようなポジショニングをしたらよいのかというテーマで話を進めていますが、これはフィニッシュ(相手ゴール前)でも応用が可能です。
気を付けなければならない点としては、相手ゴール前ではオフサイドがあるためあらかじめポジションをとっておくことができない状況があるという点です。
あらかじめ待っているとオフサイドになってしまう |
ボールを受けに入ってくるタイミングに気を付ける |
どちらもパスを受ける場所は同じです。
ボールを受けに入ってくるタイミングに気を付けさえすれば、「どこにパスを通す」「どこを通ってくるパスを受ける」という共通理解はフィニッシュの際にも大いに役立つことでしょう。
さらに詳しい内容は以下の記事にてご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。
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【キーファクター解説】「ラインブレイク」【フィニッシュ(個人戦術)】
続きを見る
パスでライン突破ができないときの対応
パスでのラインを突破する・ボールを前進させることがビルドアップ時の基本ですが、当然ながら相手はそれをさせまいと必死に守備をしてきます。
そうした場合、ドリブルやファーストタッチでラインブレイクできるように準備をすることが必要になります。
詳しくは以下の記事にてご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。
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【キーファクター解説】「ラインブレイク」【ポゼッション】
続きを見る
確認:2つのシーンのポジショニング比較
あらためて冒頭の2つのシーンを見比べてみましょう。
赤チームのポジショニングが比較的良いと思うのはA・Bどちらでしょうか?
(どちらも赤チームがGKから攻撃を開始しようとしているシーンです)
A | |
B |
回答は出ましたでしょうか。
まだ断定できないという方のために、これまで挙げてきた3つの改善ポイントにのっとったポジショニングができているかどうかを、青チームの選手間にラインを引くことによって分かりやすくしてみましょう。
A | |
B |
いかがでしょうか。
こうしてみると、Bの方が改善の必要があるポジショニングをしている選手が多いのではないでしょうか。
よって、よりビルドアップ・ポゼッションに適したポジショニングをとれているのはAということができるでしょう。
まとめ
この記事のまとめ
- スムーズにポゼッションやビルドアップをおこなうためには、ボールを失う可能性が低く、かつチャンスがあれば前にボールを運ぶことができるポジションをとる必要がある。
- ポジショニングを改善させるためには普段の練習から以下の3つのポイントを意識させる必要がある。
①常に「入口」と「出口」を見つける
②パスで「ライン」を突破できるようにポジショニングする
③同じ「入口」「出口」「エリア」に複数の選手が入らないようにする
最後までお読みいただきありがとうございます。
私も経験してきましたが、ポゼッションやビルドアップを改善させることはとても大変です。
それこそ相手がいない状況でのパス&コントロールすらうまくできないところからのスタートとなることも珍しくありません。
それでも、
「相手のミスや偶然に頼るのでなく、自分たちで狙いを持ってプレーしたい」
「特定の子の能力に頼って目先の勝利を目指すのでなく、将来につながるよう全員が関わるサッカーをしたい」
という考えを持ち、トライ&エラーを続けています。
同様の取り組みをされている指導者の方も多いですが、どのようにポジションをとらせたらよいかということについての言語化に苦しんでいる印象です。
今回の内容は対戦相手がどのようなフォーメーションであっても応用が利き、8人制やそれよりも少ない人数での試合となることもある小学生へのコーチングでも活用できますので、将来にもつながるものでありながら短い時間で目の前の課題を解決することにも役立ちます。
ぜひチーム全員のレベルアップのために活用してください!
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