この記事でわかること
- 育成年代のサッカー指導者が練習中・試合中にコーチングをする際のポイント
- 子どもたちを人間としても選手としても成長させるために練習や試合を最大限活用する方法
この記事では上記について解説していきます。
私は10年以上指導を続けてきた中で、練習や試合において数えきれないほどのコーチングをしてきましたし、いろいろなチームのいろいろな指導者のコーチングを見てもきました。
その経験から、育成年代を担当することが多い初心者コーチが見落としがちなコーチングのポイントとその対策についてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
育成年代のサッカー指導者が練習や試合で意識すべきコーチングポイント6選
「サッカーが上達してほしい」
「試合に勝ってほしい」
育成年代の指導者であれば、自分が担当している選手たちの活躍する姿を見たいというのは共通した想いでしょう。
しかしその想いが強すぎると、本来の目的とは異なった方向へ進んでしまう危険性もあります。
「自分は子どもたちの将来のために指導をしている」ということを忘れないためにはどうすればいいのか?
以下のコーチングポイントを常に頭に入れて練習や試合に臨むことで、それは可能になるでしょう。
育成年代のサッカー指導者が練習や試合で意識すべきコーチングポイント6選
- 「勝利至上主義」にならない
- ミスを経験させてあげる
- テーマやキーファクターに関係のあることのみコーチングをおこなう
- 練習や試合の開始前にポイントを整理して伝えてあげる
- 練習や試合にかかわるすべての人に感謝する気持ちをはぐくむ
- 試合前練習やハーフタイム練習を最大限活用する
パッと見ただけでは何のことかわかりにくいものもあると思いますので、ここから1つずつ詳しく見ていきましょう。
1.「勝利至上主義」にならない
サッカーは勝敗のあるスポーツですので、指導者・選手とも勝利を目指してプレーすることは当然です。
気を付けなければならないのは、勝利を何よりも優先させる「至上主義」になってしまわないようにすることです。
結果だけを求めてしまうとミスを「成長するための材料」ではなく「悪いこと」と捉えてしまい、新しいことにチャレンジすることも難しくなります。
結果よりも、全力でプレーしてもらい何ができて何が足りないのかを学んでもらうことの方がはるかに大事です。
2.ミスを経験させてあげる
「選手にミスを経験させるのは可哀そう」
そう考えている指導者もいるかもしれません。
たしかに、自分がしてしまったミスは頭に残りますので、そうした気づかいをするのもわかります。
しかし、だからこそミスを経験させてあげることが成長に不可欠なのです。
さらに言えば、それ以前に、思い通りにいかなかったことを「ミス(=悪いこと)」ではなく「改善点の発見」と捉えてもらえるようなれば理想的です。
心配なのはミスをした選手が自信を無くしてしまうことですが、そうなってしまうことなくミスから課題を見つけて果敢に何度もチャレンジできる選手にするために、指導者の役割はとても重要です。
普段の練習からチャレンジを推奨し、トライ&エラーの重要性や、
「できないこと自体が悪いのでなく、できないことをそのままにしておくことが良くない」
ということをチーム全体に浸透させることができれば、とても良い選手・良いチームになっていくはずです。
同じようなミスを繰り返す選手についても、責めたりすることなく、
「さっきと何を変えたの?」
「何に気を付けてプレーしてるの?」
というように尋ねてあげれば、少しずつ何かにチャレンジするようになります。
そうして少しでもプレーが改善されれば、見逃すことなく大袈裟なくらい褒めてあげてください。
もし選手が何をしたらいいかわからずパニックになっているようであれば、少しずつヒントを与えていけば大丈夫です。
最初から「転ばぬ先の杖」を用意してしまうと、そうした成長の機会を奪ってしまいます。
3.テーマやキーファクターに関係のあることのみコーチングをおこなう
子どもたちのうまくいかないプレーを見てイライラしている指導者をよく見かけます。
子どもたちは心身ともに未熟で成長過程の真っただ中にいますので、うまくいかないのは当然なのですが・・・。
そうするうち、目につくことすべてについてコーチング(指示?命令?)をし、誰のための・何のための練習であり試合なのかが全くわからない状態になってしまうこともしばしばです。
そうなることは絶対に避けなければなりません。
ミスが出るたびにそれを修正しようとすると、何をテーマ・キーファクターにして取り組んでいるのか・練習の成果がどれくらい出ているのか・何ができて何ができないのかがわからなくなってしまいます。
コーチングは、その日の練習や試合のテーマ・キーファクターについてのみおこなうようにしましょう。
例外として、日頃からチームから大事にしていること(練習態度・言葉づかいなど)に関しては、その日のテーマやキーファクターと無関係であっても指摘・改善してあげた方が良いでしょう。
このような話をすると、「テーマとしていないプレーにおいて良いプレーが出た時はどうしたらよいのか」という疑問も出てきます。
そんな時は、思い切り褒めてあげてください!
サッカーが好きになってもらうことはうまくなってもらうこと以上に大切ですし、好きになってもらえなくては上達もあり得ません。
4.練習や試合の開始前にポイントを整理して伝えてあげる
「いいプレーを見せたい」
「試合に勝ちたい」
指導者も選手も、こうした気持ちを持っています。
その反面、
「ミスしたらどうしよう」
「負けたらどうしよう」
という気持ちも生じてきます。
まずは指導者自身が落ち着いて、
「今日の練習では何をトレーニングするんだっけ?」
「今日の試合を迎えるまでにどんな練習をしてきたんだっけ?」
ということを確認しましょう。
自分の考えが整理できたら、練習や試合の開始前に選手たちに伝えてあげましょう。
結果だけを気にすることなく意識すべきポイントを整理してあげることで、選手たちはより生き生きとプレーできるようになります。
また、うまくプレーできずに選手が混乱する場面が出てきたとしても、
「何に気をつけるんだっけ?」
「練習でどういうことをやったっけ?」
というコーチングをすることで、立ち戻る場所を意識させることができます。
5.練習や試合にかかわるすべての人に感謝する気持ちをはぐくむ
育成年代では対戦相手のことを「敵」と言わず「相手」と表現するよう指導することが多いです。
子どもたちは悪気なく「敵が~」「敵のチームが~」という言い方をしたりしますが、指導者が率先して「対戦相手も一緒にサッカーをする仲間である」ということを伝えてあげてほしいと思います。
そして、リスペクト(尊敬・尊重)すべき対象は対戦相手だけでなく、審判や保護者、グラウンドの設営や大会を主催運営してくれた方々に至るまで多岐にわたり、「自分たちが当たり前のようにサッカーをするために、これだけの人が協力してくれている」ということを知ってもらいたいと思います。
私のこれまでの経験上、ミスジャッジやどちらとも取れる判定に対し不満を示す子どもや、試合後に相手チームの指導者と握手をする際にいい加減な態度をとる子どもが大変多いです。
自分たちに不利な判定になったとしても、試合に負けて悔しかったとしても、むしろそういう場面でこそ相手をリスペクトできるよう普段から意識づけをしていきましょう。
他者に対し当たり前と思わず感謝の気持ちを持つことは、その先の人生でどのような道に進んだとしても必要になります。
6.試合前練習やハーフタイム練習を最大限活用する
公式戦では、自分たちが試合をおこなう前にグラウンドに入って練習をさせてもらえる時間があることが多いです。
私の地区では、
「自分たちが試合をおこなう1つ前の試合のハーフタイムに5分間、ハーフコートを使った練習ができる」
というのが常だったのですが、もしかすると地区や大会規模によってさまざまなやり方があるのかもしれません。
そのように限られた時間を使用する貴重な機会で、どのような練習をしていますでしょうか?
私が目にしてきた99%のチームは、
ゴール正面の少し離れたところからペナルティーエリアを少し出たくらいのところにいるコーチに縦パス→コーチがワンタッチで落とす(ポストプレー)→縦パスを入れた選手が走りこんできてワンタッチシュート
ということをやっていました。
選手数によって順番待ちの列の数が1列だったり2列だったりしますが、私が計測してみた限りでは、同じ子がシュートを打ってから列に並びなおして再びシュートを打つまでに1分前後かかっていました。
ウォーミングアップとしてはボールタッチ数も動きの量も明らかに足りず、動きのバリエーションもありません。
私はこうした機会ではどのような練習をしていたのかというと、2チームによるハーフコートマッチをしていました。
使用できるゴールが1つしかないため、片方のチームはゴールにシュートを決めることを狙い、もう片方のチームはハーフラインを超えることを狙うようにします。
その中でテーマやキーファクターについて普段の練習通りにコーチングをすることで、頭も体も試合に臨む準備が整った状態にすることができます。
「試合前に大声でコーチングしていたら、相手チームに狙いがバレちゃうんじゃ・・・?」という疑問を持つ人もいるかもしれませんが、私は勝利のみが目的ではないので問題ありませんでした。
急遽対策を立てた相手にやられるようであればトレーニングの質や量が足りていなかったということですし、「こういうやり方をされたら何もできなかった」という材料が得られればその後の練習に役立てるだけです。
それに、極端に対策をしてくるチームはほぼ皆無でした。
ちなみに、最初に述べた縦パスからのシュートのウォーミングアップがいつどんなときでもダメというわけではありません。
小学生は夏真っ盛りでも1日に2試合やったりしますので、2試合目の前の練習では体力面を考慮してそうした練習にするのもアリかもしれません。
まとめ
この記事のまとめ
・育成年代のサッカー指導者が練習中・試合中に以下の6つのポイントを意識してコーチングをすることが、子どもたちを人間としても選手としても成長させることにつながる。
- 「勝利至上主義」にならない
- ミスを経験させてあげる
- テーマやキーファクターに関係のあることのみコーチングをおこなう
- 練習や試合の開始前にポイントを整理して伝えてあげる
- 練習や試合にかかわるすべての人に感謝する気持ちをはぐくむ
- 試合前練習やハーフタイム練習を最大限活用する
最後までお読みいただきありがとうございます。
育成年代においては、指導者の思い通りに事が進むことなどまずありえません。
オンザピッチでもオフザピッチでも、「ミス」「失敗」とよばれるものが多数発生します。
しかしそれらを「ミス」「失敗」で終わらせてしまうのか、それとも成長するための材料とできるのかは、指導者の腕にかかっています。
今回の記事では、いかにして子どもたちにチャレンジ精神を根付かせるか・いかにしてチャレンジから学ぶ力を身に着けさせるかについてまとめたと言っても過言ではありません。
ぜひそうした気持ちをコーチ自身も持って、子どもたちの将来を見据えた指導をおこなってほしいと思います。