この記事でわかること
- サッカー未経験の指導者の必要性
- 初心者コーチにできること
10年以上の指導者人生の中で未経験の指導者ともたくさん接してきましたので、そうした体験もまじえながらお話していきたいと思います。
もくじ
サッカー未経験の指導者は必要不可欠!
この記事を読んでいる人の中には、
「サッカー未経験の自分がコーチをしていることが本当にチームの役に立っているのだろうか」
と半信半疑になっていたり自信を失っていたりする方もいるかもしれません。
そんな方もご安心ください。
サッカー未経験の指導者は間違いなく必要不可欠です!
その根拠は何か?
これから挙げる2つの理由を見てもらえれば、きっと納得してもらえるはずです。
サッカー未経験の指導者が必要不可欠な2つの理由とは?
理由1:サッカー未経験の指導者もいないと人手が足りなくなるから
引用:日本サッカー協会
上記の表は、日本サッカー協会へのサッカーチームと指導者の登録数です。(2020年公表時点)
2019年度の数をみてみましょう。
未経験コーチのほとんどが所属しているであろう小学生年代(上の図でいう「第4種」)のチーム数と、主にその年代を指導するC級・D級との関係でいえば、約76,000人÷約8,500チームで1チームあたり約9人のライセンスを保有したコーチがいる計算になります。
また、指導年代を考慮せず全体数でみても、約85,000人÷約28,000チームで1チームあたり約3人のライセンスを保有したコーチがいる計算になります。
皆さんのチームはいかがでしょうか?
9人はおろか3人すらいないというようなチームも多いのが実情ではないでしょうか。
なぜそのような状況になっているのでしょうか?
この理由も2つあります。
1-1.チーム登録していない団体が数多く存在するから
例えば、サッカースクールはチームとしては活動しないため通常は日本サッカー協会へのチーム登録をおこないませんが、全国各地に数多く存在します。
また、「少年団」とよばれるチームも多く存在しますが、都道府県の公式戦でなく地域の大会に出るだけであればチーム登録の必要がないため、登録をしていないチームもたくさんあります。
こうしたことから、実際のチーム数は登録数よりはるかに多いことが考えられます。
1-2.多数の有資格コーチが在籍しているチームが存在するから
1つのチームが抱えるコーチの数は、当然ながら均一ではありません。
前述のサッカースクールに加え、良い成績を収めようと力を入れているチームにもライセンスを持った指導者が多数在籍しています。
あるJリーグクラブのサイトを見たところ、下部組織に30名近くのコーチが在籍しているクラブもありました。
仮に1チームあたり平均3人の有資格者が在籍していれば活動に支障はないと考えても、特定の1チームに30名が集中すれば、他の9チームは無資格者のみで活動する計算となります。
このようなことを書くと、
「サッカースクールはとても役に立っているのに不要だと言うのか」
「高いレベルを目指すチームが質の高いトレーニングをおこなうために多くのコーチを抱えることのどこがいけないのか」
という意見もあるかもしれません。
私は何もスクール活動や競技志向でサッカーをすることに反対しているのではありません。
よりサッカーをうまくなりたいという選手の受け皿としてそうした団体が存在することをむしろ喜ばしく思っております。
ここで伝えたいのは、もし「ライセンスを持ったコーチ以外は指導不可」となった場合、どれだけ多くの競技志向でない子どもやまだ才能が開花していない選手がサッカーをする機会を奪われてしまうかということです。
チームがなくなるまではいかなくとも、それまで活動していた曜日・時間帯の一部が活動不可となったり、学年やレベルごとにうまく分かれて練習できていたものが大勢一緒にしなくてはならなくなったりということは容易に起こりえるでしょう。
サッカー未経験ながら指導をしてくれる人がいてくれるからこそ活動できるチームがあり、そのチームでプレーできる子どもたちがいて、その中からサッカーを大好きになって競技志向へと変わっていく選手が生まれてくるわけです。
そう考えてみると、必要不可欠だと思いませんか?
プロを目指す子どもたちに教えるコーチも、楽しくサッカーをしたい子どもたちをサポートするコーチも、どちらも大変価値のある存在だと思います。
これだけでも未経験のコーチが必要な理由は十分だと思いますが、さらにもう1つお伝えさせていただきます。
理由2:未経験の指導者にも「子どもたちを人間的に成長させること」が上手な人がたくさんいるから
人手が足りないチームであったとしても、
「新しくコーチを迎えたいけど、誰でもいいってわけにはいかないしなあ・・・」
と考えてしまうことはあるでしょう。
また、サッカー未経験者が指導者になってもらえないかと打診を受けても、
「経験者と比べてサッカーの知識がない」
「プレーのお手本を見せられない」
といった点を心配して、「初心者の私に務まるだろうか」となるのは当然のことです。
でも考えてみてください。
サッカーの指導者に求められることはサッカーを上達させることだけですか?
そんなことはありません。
特に育成年代では人間的に成長させることが求められます。
そして、その能力を持った人は、サッカー未経験者の中にもたくさんいます。
例1:「教育者」として優れていたジュニアチームの監督
私は現在中学生の指導をしていますが、その前に所属していたジュニアチームの監督もプレー経験はありませんでした。
指導者ライセンスを取得したり新たに勉強したものを色々と取り入れたりと、指導に臨む姿勢にもとても学ぶ部分が大きかったのですが、何よりも素晴らしかったのは教育者としての姿でした。
その監督は教育を本業としていたので、子どもたちに対する声がけの仕方(言葉づかい・声のトーン・話す内容・問いかけの仕方など)、叱り方や保護者も含めたその後のフォローの仕方などがそれまで見たことがないレベルでした。
その他にも、
「あの時はこういう意図があってこう言った」
「プレーに関する問題が発生しているのは知っているけど、こういう狙いがあるから今はまだ子どもたちに話さない」
といった操縦術にも優れており、子供たちを人間的に成長させることにものすごく長けていました。
そのため、
「自ら考え行動できる人間を育てるコーチング」
をテーマとしている私にとってものすごく参考になりました。
例2:子どもの扱い方が上手なお父さん・お母さん
これは特定の誰かというわけではないのですが、子どもの扱い方がとても上手なお父さん・お母さんがたくさんいます。
具体例を挙げると、子どもがケンカしたときに何が悪かったのかを理解させて仲直りさせるのが上手だったり、選手のやる気や意見の引き出し方が上手だったりと、
「子どもを人間的に成長させることに関してはライセンス保持者より上」
という長所を持っている人がとても多いのです。
私も「どうやったらそんなうまくいくんですか?」と質問したり観察したりしてそのスキルを盗ませていただきましたが、それらの内容は指導者講習会でも学んだことのないもので、今でも大変役立っています。
ある大会に参加した際、自分が預かっている子どもたちや審判に対する言葉づかい・態度・服装がとてもひどい指導者を目にしたことがあります。
あとでそのチームのサイトで調べてみたらライセンス保持者でした。
どれほどサッカーの知識や技術があったとしても、指導している選手を人間的に成長させられなかったり、他者へのリスペクトを欠いたりするような人物であったならば、優れた指導者とよぶことはできません。
未経験者であっても、子どもたちにとって模範的な存在になれる人の方が、ジュニア年代の指導者にふさわしいと言えます。
「自分に特別な能力はない」と思う人もいるかもしれませんが、自分では特に長所とは考えていなかった個性でも指導に役立つことがたくさんあります。
・元気がいい
・物事をわかりやすく説明できる
・誰とでもすぐ仲良くなれる
・細かいところに気を配れる
・いつも落ち着いている
・仕事で接客に慣れている
etc・・・
ぜひ自分の長所に気付いて指導に活かしてください。
まとめ
この記事のまとめ
- サッカー未経験の指導者は役に立つどころか必要不可欠。
- 未経験のコーチでも、こんなことができます。
1:指導者が足りずに活動できないチームや子どもたちを救うことができる。
2:選手を人間的に成長させることができる。
最後までお読みいただきありがとうございます。
私が今まで目にしてきた初心者コーチの皆さんは、ある意味ライセンス保持者よりも熱意を持って指導していました。
一方で、本業があるため勉強する時間がなく、コーチング方法を身に着けることができていないということが多かったこともまた事実です。
そう考えてみると、未経験コーチこそが日本サッカーの伸びしろであると言ってもよいのではないでしょうか。
元々ある人間性に加えてライセンス保持者のようなコーチング能力が備わったら、サッカーを楽しめる子どもの数が増え、日本サッカーのレベルも上がるに違いありません。
今後もコーチングの方法やコツについていろいろと紹介していきますので、ぜひ参考にしてレベルアップにつなげてください!