この記事でわかること
- 「岡田メソッド――自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系」のおすすめポイント
- 「岡田メソッド――自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系」の注意ポイント
この記事では上記について解説していきます。
私はこの書籍を読んで、これまでやってきた練習メニューの組み立て方や着眼点について何が重要か再認識できたばかりでなく、数々の新たな知識も得ることができました。
ワールドカップで日本代表を指揮しJリーグでも優勝を経験するなど輝かしい実績を持つ岡田武史氏によるこの著書は、指導力を向上させたいと考えている指導者・コーチにとって大変有益です。
どのように指導力アップにつながるのかというおすすめポイントだけでなく、購入前に知っておきたい注意ポイントも隠さずご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
こんな指導者におすすめ!
こんな指導者におすすめ!
- 中・長期的視野を持った育成方法を知りたい方
- 「サッカーの原理・原則」を知りたい・整理したい方
- 年代ごとに何をトレーニングすべきかを知りたい方
- コーチングの質を上げたい方
- チームとして一貫した哲学・方針を持ちたい方
おすすめポイント
1.練習メニューではなく「何をトレーニングすべきか」について書かれている
約300ページのうち具体的な練習メニューが書かれているのはわずか10ページほどで、それ以外のほとんどの内容は「何をトレーニングすべきか」について割かれています。
練習メニューの本はたくさんありますが、サッカーの指導体系についてまとめられた本は大変貴重ですので、その点だけでも大変有益であるといえます。
2.指導対象がプロではなく16歳以下の選手である
本のタイトルにもある通り、16歳までの選手をどう指導していけばよいかについて書かれています。
いかに素晴らしい理論や考えが書かれていたとしても、「プロチームをどうマネジメントするか」という内容であったならば少年サッカーの指導者には活かすことが難しい内容になってしまいます。
この本ではU-10からU-16にかけて触れられているので、小・中学生を指導している方であればすぐに導入できる部分も多いと思います。
3.体験談ではなく原則が書かれている
指導実績豊富な著者ですので、「こういう場面ではこうした」というエピソードだけでも内容の濃い本が出せると思いますが、そうはなっていません。
所属するFC今治のサッカービジョンを実現させるためという前提には立っていますが、どんなチームや選手に育成しようとする時でも必ず目を向けなければならない原則について書かれています。
例えば「攻撃の一般原則」という項目を見ても、「少しでもチャンスになりそうなら積極的にボールを入れていく」「より確実にボールを運んでいく」など戦い方に違いはあったとしても「まずはここを狙い、できなければ次はここ、それもできなければ・・・」という攻撃における普遍の優先順位が整理されています。
この形式は本全体を通して一貫しているため、各原則について指導者が考えを整理するのに大変役立ちます。
4.登場するサッカー用語が明確に定義されている
サッカー用語を使うとプレーが簡単にイメージできますが、その反面、人によって解釈が異なる危険性も含んでいます。
そうしたことを避けるため、この本では4ページにわたるサッカー用語集を付録につけており、各用語を明確に定義しています。
その中には岡田メソッドでのみ使用される専門用語(新語)もあり、読んだ人全員が同じイメージや考えを共有できるよう配慮がなされています。
5.図や表が豊富に記載されている
全体を通じて「見開き2ページとも全て文字だけ」ということがあまりなく、書いてある内容が視覚的にとらえやすくなっています。
図に使用されている色は白・黒・灰色・緑のみで、無駄にカラフルになっているより格段に見やすいです。
6.内容の進み方がスムーズ
本の流れが「全体について→個人・グループについて」「フィールド全体について→局所について」となっているため、頭の中が混乱することなく各章の内容を整理してから次の章へ進むということがスムーズにできます。
そのようにしてすべての原則の紹介が終わった後は「ゲーム分析とトレーニング計画」「コーチング」「チームマネジメント」と続いていきますので、学んだ原則をどのように選手に伝えていくかということも非常にわかりやすくなっています。
注意ポイント
1.本が分厚く、重い
現物を目にすると、分厚くて重いことが分かります。
丁寧に書かれた良書であるため、それに伴ってB5サイズで全294ページと大ボリュームになっています。
仕事で忙しい方が合間を縫って読むにはそれなりの時間がかかるでしょうし、カバンに入れて持ち歩くのに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
幸いなことにKindle版もありますので、電子書籍リーダーをお持ちの方にはそちらをおすすめします。
2.内容が専門的
日本を代表するサッカー指導者が自分の考えをひとまとめにしたような本なので、どうしても内容的には堅く難しい点が入ってきてしまいます。
サッカーのテレビ中継を1試合90分丸々見ていても知らないサッカー用語は出てこないというくらいの方であれば全く問題ないと思いますが、「サッカーは全く詳しくないけど、今度からコーチをすることになったからとりあえず1冊サッカー指導に関する本を買おう」という方にはおすすめできません。
とはいえ、この本を買って読み、知らないサッカー用語が出てくるたびにその都度意味を調べていけば、1冊読み終える頃には大幅に知識が向上していることは間違いありません。
3.小・中学生年代を一貫指導できないと最大限の効果を発揮しづらい
小学生年代のみ・中学生年代のみというチームは数多くあるでしょう。
この本の狙いは中・長期的視野に立ってトレーニング計画を立てることで16歳までに必要な技術・戦術を身に着けてもらおうとすることなので、どちらか一方の年代しか指導できないとなると最大限の効果を発揮するのは難しいと思います。
そうした場合でも、「本を読んでも意味ないな」となるのでなく、それまで各学年の担当コーチが思い思いのトレーニングをしていたものを見直してチーム全体で長期計画を作成してみるだけでも子どもたちの成長には大きく貢献できますので、ぜひ試してみてください。
4.エンジョイ系チームに導入するには工夫が必要
岡田武史氏がオーナーを務めるFC今治の公式サイトでは、岡田メソッドを「日本人が世界で勝つためのイノベーティブなサッカーを確立するための指導法」と紹介しています。
そうしたチームのアカデミーには志の高い子どもたちが集まりますので、うまくなる練習であれば面白くなくても積極的に取り組んでくれますが、親しい友達同士が集まって楽しむ事が主な目的となっているようなチームではそうもいきません。
だからといって岡田メソッドの導入をあきらめるのでなく、本に書いてある原則を取り入れた楽しい練習メニューを組んであげれば新たなサッカーの魅力を子どもたちに伝えることができます。
指導者自身もレベルアップできる良いチャンスととらえ、できることから取り入れてみてください。
まとめ
この記事のまとめ
「岡田メソッド――自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系」のおすすめポイント:
- 練習メニューではなく「何をトレーニングすべきか」について書かれている
- 指導対象がプロではなく16歳以下の選手である
- 体験談ではなく原則が書かれている
- 登場するサッカー用語が明確に定義されている
- 図や表が豊富に記載されている
- 内容の進み方がスムーズ
「岡田メソッド――自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系」の注意ポイント:
- 本が分厚く、重い
- 内容が専門的
- 小・中学生年代を一貫指導できないと最大限の効果を発揮しづらい
- エンジョイ系チームに導入するには工夫が必要
最後までお読みいただきありがとうございます。
ご紹介してきたとおり、サッカー指導者・コーチにとって得るものが大変大きい有益な書籍です。
メソッドを導入するにあたり努力を要する面があるのは事実ですが、それにより享受できるメリットは計り知れません。
「はじめに」で著者が触れている通りこのメソッドは「指導者にとっての最初の叩き台」という位置づけですので、すべてコピーして終わりとするのでなく、「こうした方がより良いのではないか」というアイディアを指導者が出し続けてこそ価値が生まれます。
この本をきっかけにして、更に良い指導者へと成長していってください!