※本記事の内容は、noteにて公開中の記事より著者が特別に再構成・引用したものです。
👉https://note.com/pf_soccer_coach/n/nd12422c4a48c
はじめに
こんにちは。
「PLAYERS FIRST! 〜育成年代コーチのためのサッカー指導メソッド〜」をご覧いただきありがとうございます。
「練習メニューは作っているけれど、これで本当に上手くなるのか自信がない」
「その日ごとにバラバラの練習になってしまう」
そんな悩みを持つ育成年代コーチの方に、ぜひ知っていただきたい内容です。
今回は、私がサッカー未経験から指導を始めながらも成果を出せるようになった最大の要因の1つである、
「練習メニュー作成に至るまでの“トレーニング設計の考え方”」
についてお伝えします。
※この記事では、
「練習」=1回のセッション
「トレーニング」=長期的な育成の流れ
という意味で使い分けています。
1日の練習メニューを作成するために不可欠な6ステップ
失敗してしまうコーチがやりがちな方法
練習の効果がいまいち出せないというコーチは、いきなり「今日の練習メニューをどうするか」から考えてしまいがちです。
しかしこの考え方では、練習がどうしてもその場しのぎ・行き当たりばったりになってしまいます。
1日のメニュー作成は「最初」ではなく「最後」
本来たどるべきステップは以下の通りです。
①「チーム方針」を立てる
②「年間スケジュール」を立てる
③「月間テーマ」を決める
④「週間テーマ」を決める
⑤「キーファクター」を決める
⑥「1日の練習メニュー」を作成する
つまり、1日のメニュー作成は「最初」ではなく「最後」なのです。
サッカーの練習指導をする際には1日の練習メニューを作成しておく必要がありますが、そのステップはこの記事でいうところの6番目、つまり最後のステップにあたります。
6番目のステップに行く前に5つの適切なステップを踏むかどうかで、練習の効果はまったく違ってきます。
ぜひご自身のやり方と比べてみてください。
もしかしたら今まで意識してこなかった内容も含まれていたかもしれません。
この「長期計画からスタートして徐々に期間を狭めていく」というスケジュールの立て方は、私がスペインの育成メソッドを学んだ際に特に強調されていた考え方でもあります。
実際に導入してみると様々な良い効果が生まれ、練習の効果が日を追うごとに向上してくるのを感じました。
それでは、このようなスケジュールの立て方をすることでどのような効果が生まれるのか見ていきましょう。
6ステップを踏むことで生まれる効果とは?
1日の練習メニューを作成する前に5つのステップを踏むことで、以下のような効果が期待できます。
・長期的な計画を立てることで、一貫性を持った練習ができる
・各年代でトレーニングすべきテーマを確認することができる
・習得すべき技術・戦術について、練習時間・回数の偏りや取り組み忘れを防ぐことができる
・練習がどの段階にあるのかを他のコーチと共有できる
・不測の事態で当日の指導に入れなくなった場合でも、何についてトレーニングしたらよいかを代わりのコーチにすぐ伝えることができる
・練習目的が頻繁に変わるということがないため、選手が理解しやすい練習ができる
・1日の練習メニューを作成する時間が短縮できる
これらはあくまで一例で、それ以外にも様々な効果を実感できるはずです。
もしどこかのステップを飛ばしてしまえば、練習内容が行き当たりばったりとなってしまいます。
例えば、「昨日はなるべくパスを使ってボールを失うなと言っていたのに、今日は奪われてもいいから積極的にドリブルしろって言ってる・・・」といった具合です。
1日1日の練習メニューが良いものであっても、選手の中に積み上がるものはないでしょう。
そうした悲劇を起こさないためには、丁寧に考えられた計画が欠かせないのです。
ここまで読んで、
「必要性は感じたけど、なんか難しそう・・・」
「何をやったらよいのかわからない・・・」
と感じている人もいると思いますので、ここからは各ステップで何をしたらよいのかについて解説していきます。
各ステップでやるべきこととは?
①「チーム方針」を立てる
「あなたのチームはどんな方針で活動していますか?」と言われたら答えられるでしょうか。
ここが定まらないと以降のステップがすべて見当違いなものになってしまいます。
自分で考える必要がある場合もあれば、すでにチームで定められている場合もあるかと思いますが、必ず明確にしておきましょう。
チーム方針の例としては、
・誰でも楽しめるチームにする
・チャレンジ精神をはぐくむ
・文武両道を目指す
・地域に貢献できるチームを作る
・ずっとサッカーを続けてもらえるようにする
など、様々なものが考えられます。
当然ながらどれが正解というものはありませんが、育成年代の指導者が必ず頭に入れておかなければならないものはあります。
それは、将来を見据えた方針にしなければならないということです。
例えば、サッカーは相手があるスポーツですので勝利を目指すことは当然ですが、それを最優先させる「勝利至上主義」になってはなりません。
どんなチーム方針で指導することが子どもたちを人間としても選手としても成長させるのかを考えて設定するようにしましょう。
②「年間スケジュール」を立てる
チーム方針を決めたら、年間スケジュールを立てましょう。
年間スケジュールについても唯一の正解というものはありませんが、意識すべきポイントはあります。
小学校の授業を思い出してみても、足し算・引き算・掛け算・割り算をすべて1年間に詰め込むというようなことはなかったでしょう。
必ず簡単なものから難しいものへ、単純なものから複雑なものへと、数年かけて進んでいったはずです。
この流れは、年間スケジュールを作成する際にも必要となります。
ボールコントロールひとつとっても、「自分が思ったようにボールを動かせるか」というところから「状況に即したプレーを正確に実行できるか」へと変わっていき、戦術面でも「相手なし」から「複数対複数」へと変わっていきます。
急に練習内容が難しくなったり、その反対にいつまでも簡単な練習をしているとなったりしないよう、卒業するころにはどういうことができるようになっているべきかを考えて、そこから逆算して1年ごとのスケジュールを決めていきましょう。
初めて年間スケジュールを立てるときは難しく感じるかもしれませんので、監督や責任ある立場のコーチに相談してみるとよいと思います。
また、チームのグループ分けが学年ごとではなく低学年・高学年などで分けられている場合もあると思いますが、そうした場合は1年ごとのスケジュールでなくて大丈夫です。
ジュニアサッカーチームの年間スケジュール例:
1・2年生:ボールコントロールを身に着ける
3・4年生:複数対複数(2~3人)での攻撃・守備を身に着ける
5・6年生:複数対複数(4~6人)での、ピッチの幅と深さを意識した攻撃・守備を身に着ける
③「月間テーマ」を決める
1年ごとのトレーニング計画が決まったら、その計画を達成できるように毎月のテーマを決めましょう。
設定する月間テーマは1つ1つのプレーを設定するのでなく、より広い枠組みで設定するようにします。
例えば、「シュート」というテーマ設定では、1つのプレーを設定したことになってしまいます。
もしチームの課題が「毎試合10回くらい決定的チャンスを迎えるけど、全部シュートミスで入んないんだよね~」ということであればシュートを打つ練習だけを1か月重点的にやるというのもアリだと思います。
しかし実際は、シュートの精度以外にも、
「味方のパスを正確にコントロールできず、相手ディフェンスに寄せる時間を与えてしまう」
「パスを受ける時の体の向きが相手ゴールを向けていないため、シュートまで行けない」
などといった点の改善も必要なケースが多いです。
そのため、この場合の月間テーマは「シュート」という1つのプレーに絞るのでなく、「フィニッシュ(=ゴールを奪う)」というより広い枠組みを設定するようにします。
※月間テーマは、どのようなテーマを設定するのかやどのテーマにどれだけの期間取り組むかという点に関しては指導者の考え方次第で変わります。
小学校4~6年生の月間テーマ例
4月:ポゼッション
5月:ポゼッション・ビルドアップ
6月:ビルドアップ
7月:フィニッシュ(個人戦術)
8月:フィニッシュ(個人戦術)
9月:フィニッシュ(グループ戦術)
10月:フィニッシュ(グループ戦術)
11月:ディフェンス(個人戦術)
12月:ディフェンス(個人戦術)
1月:ディフェンス(グループ戦術)
2月:ディフェンス(グループ戦術)
3月:各テーマの遅れを見込んだ調整期間
④「週間テーマ」を決める
週間テーマにはどんなものがあるのかというと、実は1つ前のステップである「月間テーマ」のところで既にいくつか出てきています。
・味方のパスを正確にコントロールできず、相手ディフェンスに寄せる時間を与えてしまう
・パスを受ける時の体の向きが相手ゴールを向けていないため、シュートまで行けない
上記2つの事例の中に、
・シュート精度(シュートを決める)
・シュートを打つためのファーストタッチ
・パスを受ける時の体の向き
という3つの改善すべきポイントが出てきています。
こうした改善ポイントを週間テーマとして設定しましょう。
当然ながら、週間テーマは月間テーマに関連のあるものでなければなりません。
月間テーマが「フィニッシュ」であるのに週間テーマが「相手からボールを奪う」であるなどというようなことがないようにしましょう。
⑤「キーファクター」を決める
ここまでたどり着いたら、1日の練習メニューの作成にとりかかるまであと少しです。
ここでは、1日の練習メニューを作成するにあたって設定する「キーファクター」を考えます。
「キー(=鍵)」「ファクター(=要因)」の名の通り、キーファクターとはプレーを改善させるためのカギとなる要因のことです。
週間テーマを「シュートを打つためのファーストタッチ」と設定した場合でも、チームや選手のレベルなどによってキーファクターは全く変わってきます。
もし指導対象がサッカーを始めたばかりの子どもたちで、自分の所に来たボールを止められないことがシュートを打つまで行けない原因であるのなら、キーファクターは「ボールコントロール」になるでしょう。
しかし、ボールコントロール自体はうまくできるレベルにある選手が指導対象であれば、頭の中で「まずボールを足元に止めること」が最優先されていることがシュートまで行けない要因だったりします。
そうした場合のキーファクターは、「攻撃の優先順位(シュートをまず第1に考える)」という意識づけの方になるでしょう。
また、設定するキーファクターの数も、選手のレベルや理解力によって変わってきます。
レベルの高い選手が指導対象であれば5個以上設定してもよいでしょうし、選手たちがとても苦手にしているプレーを練習するのであったりサッカーを始めたばかりの子どもたちを指導するのであったりすれば、1個でよい場合もあるでしょう。
⑥「1日の練習メニュー」を作成する
ここでようやく、1日の練習メニューを作成するステップに到達しました。
1日の練習メニューを作成する機会はすべてのステップの中で最も多いので、作成のポイントについて知っておくことは指導の際に大変役立ちます。
1日の練習メニューの質を上げる方法はいくつもありますが、その中でも特にここで知っておいてほしいポイントは、
・キーファクターを意識する
・練習開始から終了までの流れを意識する
という2つです。
キーファクターについてはすでにさきほど⑤でお話ししましたので、ここでは「練習開始から終了までの流れ」について確認しましょう。
「練習開始から終了までの流れ」は、
①ウォーミングアップ(当日の練習テーマの確認・頭と体の準備)
②トレーニング1(練習テーマやキーファクターを意識・習得させるためのシンプルなトレーニング)
③トレーニング2(トレーニング1を発展させた練習)
④ゲーム(練習テーマやキーファクターを意識・習得させながらの試合形式のトレーニング)
⑤クーリングダウン(整理体操・練習テーマやキーファクターの確認や振り返り)
となるように意識します。
まとめ
・練習の効果が出せないコーチは、いきなり「今日の練習メニューをどうするか」から考えてしまいがち
・最高の練習メニューを作成するためには、以下の6ステップが必要不可欠。
①「チーム方針」を立てる
②「年間スケジュール」を立てる
③「月間テーマ」を決める
④「週間テーマ」を決める
⑤「キーファクター」を決める
⑥「1日の練習メニュー」を作成するこの6つのステップを踏むことで、
・選手の年代やレベルが考慮された一貫性のあるトレーニングをおこなうことができる
・選手にも指導者にも目的が理解しやすいトレーニングができる
など、様々な良い効果が得られる。
・それぞれのステップでは、長期・中期・短期の計画を立てることが目的となる。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回ご紹介した6ステップの中には、1年のうち1~2か月しかサッカーをやらない体育の授業や、楽しくやれればいいというサークルなどでは、飛ばしていいステップもあります。
ただし、サッカー指導者として選手の質を最大限に高めたいのであれば、必須の知識であり作業です。
実際取り掛かってみるととても難しく時間がかかる作業だと思いますが、いったん作ってしまえば毎日の練習メニューの作成が楽になるなど結果的に時間の短縮にもなりますし、その効果は労力を必ずや上回ってくれます。
今回の記事を参考に、ぜひ「6つのステップ」を意識したトレーニング設計に取り組んでみてください。
【保存版】指導メソッド・ライブラリ
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