コラム

自チーム向けに最適化|練習メニューの調整法

※本記事の内容は、noteにて公開中の記事より著者が特別に再構成・引用したものです。

👉https://note.com/pf_soccer_coach/n/n6c64058a0e59


はじめに

こんにちは。
「PLAYERS FIRST! 〜育成年代コーチのためのサッカー指導メソッド〜」をご覧いただきありがとうございます。

「今日はどんな練習をしようかな・・・」

指導者であれば、誰しも一度は頭を悩ませたことがあるはずです。

そんな時、ネットや本に載っている練習メニューに助けを求めることも少なくないでしょう。
そのこと自体は、決して悪いことではありません。

しかし、練習がうまくいかない原因の多くは「良いメニューを知らないこと」ではなく、メニューをそのまま使ってしまっていることにあります。
効果的な練習を行うためには、「練習メニューを再現すること」と「練習で起こしたい現象を再現すること」は別であるという視点が必要です。
その違いを意識して指導に臨むことが、練習の質を大きく左右します。

この記事では、練習メニューを採用する前に確認しておきたいポイントと、個々のメニューを自チームに適した形に近づけるための調整方法を整理します。
こうした視点を持つことで、「良い練習メニューを探す指導者」から「目の前の選手に合わせて練習を設計・調整できる指導者」へ一歩近づけるはずです。

また、現場で「このままでいいのか?」と迷ったときにすぐ確認できるよう、練習を調整するための視点をチェックシート形式でまとめたPDFも記事のおわりに用意しました。

・課題が簡単にクリアできすぎているとき
・難しすぎて止まってしまうとき
・狙いとプレーが噛み合っていないとき

そんな場面で、どこを変えると何が変わるのかを整理しています。
現場で迷ったときにすぐ見返せる「判断の補助ツール」としてご活用ください。


練習メニューをそのまま使っても効果が出にくい理由

練習メニューをコピーしただけでは、
「想像していたような練習にならない」
「期待していたような効果が出ない」
という結果になることが少なくありません。
それは、練習メニューの良し悪し以前に、設計や実践の段階で見落としがちなポイントがあるためです。

設計段階

①練習内容が事前に計画されたテーマ・キーファクターに沿っていない

チームが取り組んでいる練習のテーマやキーファクターを考慮せず、
「有名な指導者やチームがやっている練習だから」
などという理由で取り入れてしまうと、選手たちにとっては意識するポイントが急に変わってしまいます。

また、
「ポゼッションを改善するための練習だと思っていたが、やってみたらサイドを崩すための練習になってしまった」
などとなってしまうこともよくある話です。

ネットや本などで紹介されている練習メニューの中には練習テーマやキーファクターが明示されていないものも少なくありません。
良い練習メニューであるかどうかだけを基準にするのでなく、自分たちの課題の改善につながる練習であるかどうかを常に意識しましょう。

②練習に「流れ」がない

1日の練習メニューには、以下のように徐々に心身の負荷を高めていく「流れ」が必要です。

①ウォーミングアップ
②トレーニング1
③トレーニング2
④ゲーム
⑤クーリングダウン

それを考慮せずに、
「初めから負荷の高いメニューをおこなう」
「負荷が高いメニューになったと思ったら次は低いメニューになる」
「1日を通して負荷が一定のまま終わる」
といったことになれば、良い効果を望むのは難しくなります。

③練習メニューの適切な段階(フェーズ)を考慮していない

②でお伝えしたように、1日の練習は段階を踏んで心身の負荷を上げていく必要があります。

しかし、「これはいいな!」と見つけた練習メニューが1日の最後におこなうべきものであるにもかかわらず序盤で取り入れてしまえば、本来その途中で伝えるべきポイントを抜かしてしまうことになります。

反対に、練習終わりに基礎的な練習をしても、「よりゲームに近い状況でも今日練習した成果が発揮できるか」という確認ができないまま終わってしまいます。

そうしたことを避けるため、参考にする練習メニューがどの段階に該当するものなのか、必ずチェックするようにしましょう。

実践段階

④練習内容がプレーする選手に合っていない

ひとくちに「選手に合っていない」と言っても、要求する技術の難易度や、集中して取り組める時間、ルールの複雑さなど、さまざまな要素が含まれます。

これらが適切でない場合、選手にとって肉体的・精神的に適切な負荷がかからず、期待した効果は得られません。


練習メニューをチーム状況に合わせるための調整項目とその効果

ここまで見てきたように、練習メニューをそのままコピーしてもうまくいかない理由の多くは、練習を始める前の設計段階にあります。
そのため、可能な限り事前の準備に注意を払うことが重要です。

しかし、仮に準備不足であったと気づいた場合でも、練習が始まってからその場で修正できることは限られています。

一方で、実践段階、つまり練習メニューの条件や設定の中には、練習中や練習開始直前であっても指導者が調整できる要素が数多く存在します。
練習時間の長さや人数設定、ルールの置き方、関わり方ひとつで、同じ練習メニューであっても得られる効果は大きく変わります。

だからこそ本章では、練習メニューそのものの良し悪しを論じるのではなく、自チームの状況に合わせて練習を調整するための具体的な項目に焦点を当てて整理していきます。

①プレーエリアの広さ

調整によって変わること:
・必要なボールコントロール
・相手や味方との距離
・判断時間

プレーエリアを広くすることによる具体的な変化:
・オフザボール時の準備や工夫がより必要になる
・身体的な負荷が上がる

プレーエリアを狭くすることによる具体的な変化:
・判断にかけることのできる時間が短くなる
・より正確なボールコントロールが求められる

一般的な傾向:
・プレーエリアを広くする → 攻撃しやすくなる
・プレーエリアを狭くする → 守備しやすくなる

②参加人数

調整によって変わること:
・各選手のボール関与回数
・認知すべき情報量
・運動量
・集中力

参加人数を増やすことによる具体的な変化:
・状況把握のために確認すべき情報が増える
・オフザボールの時間が増える
・リーダーシップやコミュニケーションがより求められる

参加人数を減らすことによる具体的な変化:
・ボールタッチの回数が増える
・プレーに関する責任の所在がより明確になる
・運動強度が高まる
・集中力が保たれやすくなる

一般的な傾向:
・参加人数を増やす → 守備しやすくなる
・参加人数を減らす → 攻撃しやすくなる

同じ「同数」でも、両チームの人数によってプレー環境は変わります。
例えば、「2 vs 2」と「11 vs 11」では現れる現象が全く異なるので、練習メニューを考える際にはこの点も頭に入れるとよいでしょう。

③フリーマンの有無(数的優位・劣位の有無)

調整によって変わること:
・ボール保持の安定性
・判断の難易度

フリーマンを入れることによる具体的な変化:
・攻守の切り替えの頻度が低下する
・攻守の優先順位の整理がより必要になる
 攻撃側:ボール保持とゴールを狙うことのバランスをとる
 守備側:相手より人数が少ない中で、より重要な場所を優先的に守る

フリーマンを入れないことによる具体的な変化:
・1 vs 1の攻守が増える

一般的な傾向:
・フリーマンを入れる → 攻撃しやすくなる
・フリーマンを入れない → 守備しやすくなる

※同じ「+ 1フリーマン」でも、両チームの人数によってプレー環境は変わります。
例えば、「1 + 1フリーマン vs 1」と「10 + 1フリーマン vs 10」とでは現れる現象が全く異なるので、練習メニューを考える際にはこの点も頭に入れるとよいでしょう。

④ゴールの広さ

調整によって変わること:
・フィニッシュの難易度
・守備の難易度
・攻撃の選択肢

ゴールを広くすることによる具体的な変化:
・ゴールへの意識が高まる(シュートの頻度やレンジ、ラストパスやドリブルの仕掛け)
・タイトな守備がより必要になる(シュートを打たせない・ゴールに向かわせない・フリーにさせない)

ゴールを狭くすることによる具体的な変化:
・丁寧なシュートやラストパスが増える
・積極的にボールを奪いに行く守備が増える
・崩し方について種類の豊富さや質の高さがより求められる

一般的な傾向:
・ゴールを広くする → 攻撃しやすくなる
・ゴールを狭くする → 守備しやすくなる

⑤ゴールキーパーの有無

ゴールキーパーがいると、攻撃時には相手 + 1ができるので、③で示した「フリーマンを入れることによる具体的な変化」が生まれます。
また、ゴールが決まりにくくなることから、④で示した「ゴールが狭くなることによる具体的な変化」も同様に生まれます。
以下は、その他の事例です。

調整によって変わること:
・練習(特にゴール前)のリアリティ

ゴールキーパーを入れることによる具体的な変化:
・試合で入るシュートなのか・チャンスになるプレーなのかを実体験できる
・より試合に近い状況の中で課題の確認ができる
※以下も加わります。
・③で示した「フリーマンがいることによる具体的な変化」
・④で示した「ゴールが狭くなることによる具体的な変化」

ゴールキーパーを入れないことによる具体的な変化:
・③で示した「フリーマンがいないことによる具体的な変化」
・④で示した「ゴールが広くなることによる具体的な変化」

一般的な傾向:
・ゴールキーパーを入れる → 守備しやすくなる
・ゴールキーパーを入れない → 攻撃しやすくなる

⑥特別ルールの設定

設定されることの多い特別ルールは以下の通りです。
・タッチ数制限(〇タッチ以内・必ず〇タッチでプレー・指定エリア内やシュートの時は〇タッチでプレーなど)
・指定エリア内での人数制限(このエリアに入れるのは最大〇人など)
・ゴール方法(ゴールにシュート・ライン突破・指定エリア内にボールを止めるなど)
・その他(パスを〇本つないでからシュート・ボールを持っている選手はその場から移動禁止・スローインではなくキックインでプレー再開など)

調整によって変わること:
・判断時間
・使う技術や動き
・技術や動きの使いどころ

特別ルール設定をすることによる具体的な変化:
・事前の準備やサポートがより必要になる
・設定された状況において必要な技術・戦術に意識が向く

特別ルールを設定しないことによる具体的な変化:
・選手の得意なプレーが増える
・選手の自由なひらめき・アイディアが出やすくなる

一般的な傾向:
・ルール設定によって攻守どちらがしやすくなるかは、設定するルールによる。

⑦練習時間の長さ

調整によって変わること:
・身体的・精神的負荷
・成功・失敗の体験数

練習時間を長くすることによる具体的な変化:
・精神的・身体的持久力がより必要になる
・プレー機会が増える

練習時間を短くすることによる具体的な変化:
・集中力を保ったまま練習に取り組めるようになる

一般的な傾向:
・練習時間の調整によって攻守どちらがしやすくなるかは、練習メニューによる。

⑧コーチング(頻度や方法)

調整によって変わること:
・選手の気づき方
・主体性の度合い
・練習のテンポ

コーチングを増やすことによる具体的な変化:
・練習のポイントをより明確にできる

コーチングを減らすことによる具体的な変化:
・選手自身の気づきや試行錯誤が生まれる

一般的な傾向:
・コーチングによって攻守どちらがしやすくなるかは、コーチングの頻度や内容、方法による。

コーチング能力そのものはすぐに向上するものではありませんが、「方法の選び方」を知っているだけでも指導の質は大きく変わります。

3種類のコーチング方法

①フリーズコーチング(ゲームフリーズ)
②シンクロコーチング
③ミーティング

①フリーズコーチング(ゲームフリーズ)
全体のプレーを止めておこなうコーチングです。
メリット:当事者だけでなく全体に向けて必要事項を伝えることができ、共通理解を図りやすい
デメリット:短時間ではあるもののプレーを中断する必要がある

②シンクロコーチング
全体のプレーを止めずにおこなうコーチングです。
メリット:プレーを止めずにコーチングができるため、選手のやる気や集中力をそぐことなく必要事項を伝えることができる
デメリット:プレーをしながら外からの声を聞くことになるので、当事者以外には何がプレーのポイントであったかが伝わりにくい

③ミーティング
ホワイドボードや作戦ボードなどを使用しておこなうコーチングです。
メリット:俯瞰した状態でプレーを確認できるので、プレーのポイントや全体像をつかみやすい
デメリット:実際のプレー状況を見せているわけではないので想像で補う必要があり、選手の年齢によっては効果が限定されてしまう場合がある


まとめ

練習メニューをそのまま使っても効果が出にくい理由:
①練習内容が事前に計画されたテーマ・キーファクターに沿っていない
②練習に「流れ」がない
③練習メニューの適切な段階(フェーズ)を考慮していない
④練習内容がプレーする選手に合っていない

練習メニューをチーム状況に合わせるための調整項目:
①プレーエリアの広さ
②参加人数
③フリーマンの有無(数的優位・劣位の有無)
④ゴールの広さ
⑤ゴールキーパーの有無
⑥特別ルールの設定
⑦練習時間の長さ
⑧コーチング(頻度や方法)

練習メニューをチーム状況に合わせるための調整項目はまとめに入れられたのですが、効果まで入れようとするとまとめにならないため、別資料としてPDFにまとめました。
練習を組み立てる際や、「この練習、少し合っていないかも」と感じたときのチェックリスト・調整のヒントとして活用していただければ幸いです。


練習メニュー調整項目・効果一覧(PDF)

練習メニュー調整項目・効果一覧(PDF)


おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます。

チームの方針・選手の年齢・グラウンドの広さ・指導者の経験値など、チームを取り巻く状況は千差万別です。

そうした中で、仕事や家庭と両立しながら指導に携わる未経験・初心者コーチが、毎回ゼロから質の高い練習メニューを考えるのは簡単なことではありません。
手っ取り早くネットや書籍から練習メニューを見つけ、そのまま使ってみたくなるのも自然なことだと思います。

しかし、記事内でお伝えしてきた通り、練習メニューを自分で考えないこと自体が問題なのではなく、自チームの状況に合わせた調整ができていないことが、うまくいかない原因になるケースは少なくありません。
同じ練習メニューでも、適切に調整できるかどうかで、練習は「作業」にも「成長の場」にも変わります。

今回ご紹介した考え方や調整の視点を参考に、まずは一部でも構いませんので、自分のチームに合う形へ少しずつ手を加えることにチャレンジしてみてください。
選手たちのプレーの質や取り組む姿勢が変わり、指導者としてのやりがいや喜びを感じられる場面が増えていくはずです。


【保存版】指導メソッド・ライブラリ

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